アメリカのキングオブロックンロール、エルビス・プレスリーは、42歳の短い生涯を燃え尽きるように生きた。そう、燃え尽きたという言葉に尽きる。燃え盛る線香花火がその火種とともにポトリと落ちて消えて無くなるように、与えられた生涯を、フル稼働の真っ最中に、まるでそうなることも納得できるような幕引きで、突然この世を去った。
死後40年が経っても、彼の音楽は世界中に多大な影響を与えている。エルビス伝説は、今なお時を超えて語り継がれている。お母さんの誕生日のプレゼントに彼が初めて録音した歌は、世界の音楽に地殻変動を起こすマグマの塊だった。その日ロックンロールがこの世に生まれた。他の何ものでもない。何もかもが彼の生み出した新しい世界であり、佇まいやパフォーマンスまでが彼だけの新しいスタイルだった。メンフィスの源流は、地球全体を河口として広がり、幾千もの枝葉に血脈をつないでいくことになる。もはや、彼の生涯の長さは問題ではない。何を成したかである。エルビスの一生は、文句なしに中身の詰まったものであり、オリジナルな輝きを持ったものであり、世界中を震撼させるものであった。
没後も衰えることなく、毎日昇る朝陽のように、その影響の光が世界中に降り注いでいることを考えると、エルビスは、姿こそこの世に見当たらないというだけで、今もなお生き続けているのだ。