なんだよなあ。そうなんだけど、
部屋の中にいるんだなあ、今日も。
僕は今、ある曲のアレンジでいっぱいいっぱい。
曲によっては作曲よりもアレンジの方が大変だよ。
そんな余力のない僕のところに、
友だちになって半年ぐらいになるかな、
一匹の母ネコが、フラッと遊びに来てはエサをねだるんだ。
鰹節や小魚なんかをあげると、美味しそうにたいらげて、
足音も立てずに静かに去って行く。
ネコのそんな気まぐれで風みたいなところが好きなんだけど(笑)。
どこから来てどこに帰るのか、今までまったく知らなかったのに、
最近たまたま通りかかった筋道の脇の、植え込みから
彼女が顔を出したところを目撃したんだ。そして目が合った。
でも彼女は「ああ、食べ物をくれるおじさん!」
というような表情にはならないで、
ぷいっと、顔を背けたんだ。おいおい、無視かいっ!
その素っ気なさにおいては天下一品だね。
でも僕も何となくバツの悪い感じになってしまった。
どうやら彼女は子育てをしているらしい。
偶然とは言え、居場所を突き止めてしまうことになったけど、
知らないままの方が良かったかな。
僕も事務所に来ている時にしか会わないので、
お互いに所在を知らないままの関係が良かったのかもしれない。
何となくフェアじゃないな。
でも僕も彼女も、それぞれやらなきゃいけないことがあって、
そこに向かっている。やらなきゃいけないことを一番目に据えている。
そしてその合間にふらっと会いに来て、少しだけ触れ合う。
でもお互いに干渉はしない。
それがいいのかもしれない。
ん、悪くない5月だ。