首都東京を眼下に

首都東京の街並みを眼下に見ながら、
連載締め切りギリギリで原稿を書き終え、
今ペンを置いたところです。

なーんて書いてみたいねー。
そんな風に思わずペンを取りたくなる、
高層ホテルの一室でありますよ。
(今やペンなんかでは書きませんが)
気持ちのいい東京の空です。

思えば7階建ての建物が一番高かった宮古島から、
東京に出てきたのが18才の時でした。
西新宿の高層ビルの下のベンチで、高校の同級生と
待ち合わせをし、二人で弁当を食べました。
その同級生が、都会のビルの下で弁当を食べるのが
ずっと夢だったと言っていたので、
その夢の実現に付き合ったのです。
遥か高い高層ビルのてっぺんを見ては、
「すごいなぁ、高いなぁ」と感動のため息を漏らし、
至近距離の弁当に視線を戻しておかずを口に入れ、
また上を眺めては「都会だなぁ」と何度も言いました。
そんな風にして上を眺めているのは、僕ら二人だけでした。
高層ビルの下を歩いている人たちがまったく上を見ないことに、
僕らはまた驚いて「すごいなぁ」と口にしました。

片側2車線以上の道路も、立体交差の高架橋も、踏切の遮断機も、
テレビのCMさえも見たことがなかった少年時代に、
島で一番高いマンションを「7階建て」と呼び、
その建物のエレベーターに乗りたくて、
友だちと一緒に自転車を漕いで目指したものです。
そんな7階建てくらいの建物が、今眼下に探せません。
高いビルに埋もれています。
あの頃目指したものが、埋もれている。これいかに!
そもそも目指すものを間違えていたということか...

いやはや。

 

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