突然ですが、
ベビースターラーメン
おいしいですね。
僕は大好きです。
旅先で必ずベビースターラーメンを一袋だけ買います。
旅が終わるまでにこれを少しずつ食べます。
買っても食べないときもあるのですが、かばんの中にはいつも本の隣にあります。
これはもう何かのおまじないみたいなものですね。
食べないで持っているだけでも幸せな気持ちになります。
子どものころ、同級生の男子たちもみんなベビースターラーメンをポケットに入れていました。
一気に食べきるヤツもいたのですが、僕らの間では袋を小さめに裂いて、少しずつ口に入れるのが主流でした。
あるとき誰かが、
「ベビースターラーメンは人からもらうほうがおいしいよ!」
と言い出しました。すると周りのみんなも
「オレもそう思ってた」
と口々に言い、自分の小遣いでは買わずに、友だちから少しずつ分けてもらって食べるヤツが増えていきました。
本当にそうなのかなぁ?と、僕も自分のものはポケットにしまいながら、半信半疑で友だちに分けてもらって食べてみましたが、なんのことはありません。いつもと変らない普通の(もちろんおいしい)ベビースターラーメンの味でした。
しかし、“人からもらったら美味しいよ説”は、まことしやかにみんなに広まっていきました。そしていつの間にか、その思いが共有できる派とできない派との、微妙な暗黙の境界線みたいなものが生まれていったのです。
ある日僕は親から小遣いがもらえずに、ベビースターラーメンを買えないでいました。
(あー、ベビースターラーメンが食べたいなぁ)と思っていたまさにそのときです。たまたまそこにもったいぶった感じでポケットからその袋を引っ張り出す友だちがいました。
彼はゴソゴソと袋を伸ばすと、何も言わずに僕の掌に味塩を振るような要領でベビースターラーメンを、ホントに少しだけ落としてくれました。
僕はゆっくり口に持っていって、ダンプカーが荷台を上げて穴の中に砂利を落とし込むように、それを口の中に落としました。
「うわぁぁぁ~はぁぁ !!」
ベビースターラーメンの味が、もう次回は無いよ、今回限りよという雰囲気を醸し出しながら僕の口の中に広がっていきました。
(もっと食べたーい!)
きっとアンコールが来るであろう胃袋の奥深くへと、その味と香りを残しながら落ちていきました。
しかしそれはただの一度きり。もう二度とないチャンスでした。
(もっともっと自分の好きなだけ口の中に入れてじっくりいつまでも味わいたーい)
そういうことだったんですね。
自分では手に入らないちょっとした絶望と、どうしても食べたい欲求とが心の中でうまい具合にブレンドされたときに、絶妙なタイミングで誰かからもらったからこそ生まれたあの感覚だったのです。いつものおいしさに、その幸福感が上乗せされて、おいしさが倍増した気持ちになったんですね。
今になって思うのですが、ベビースターラーメンが何十年も不動の地位を譲らずに、みんなに愛され続けている理由は、おいしさはもちろんですが、その量と価格とパッケージの、三つの組み合わせの絶妙のバランスではないでしょうか。
あの頃の僕らの感覚でいうと、
安いのにけっこう入っている。
でもうますぎて食べ終わると足りない感じ。
だからポケットにしまいながら少しずつ食べる。
(それも袋入りだから可能だったのです)
あの頃の幸せな気持ちをせめて雰囲気だけでも味わいたくて、旅先でいつもベビースターラーメンを買って宿に持ち帰るのが今や日課になってしまいました。
しかし、やっぱり自分で買っているからでしょうか、おいしいのはおいしいのですが、そこまでピークの幸福感には至りません(笑)。
だれかぁ~、ベビースターラーメン買ってちょうだーい!それもちょっとだけねー。
ぜんぜん関係ない写真ですみません。
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