幼少の頃、僕は馬車を乗り継いで学校に通っていました。
パリ行きの馬車です。
じいやが手綱を持って、ばあやはその隣に座って、
雀たちの声を聞きながら、
ひときわ牧歌的な風景の中を
パッカパッカと歩いて行くのです。
ところがその馬車はパリ行きなので、
途中、学校に向かう道とは別の道へと逸れて行きます。
すると僕は、ポーンと馬車から飛び降りて、
何事もなかったかのような背中で、
学校の方の道を歩いて行くのです。
しばらく歩いていると、
また別のパリ行き馬車がやって来て、
僕を追い抜いていこうとするので、
その馬車の後ろに当たり前のように飛び乗って、
行き先が分かれるまではお世話になるのです。
手綱を持つおじぃは、チラッと後ろを振り向くと、
「また童(ヤラビ)か」というような顔をするのですが、
声には出さず暗黙のすまし顔で手綱に視線を戻します。
そうやって、農耕馬車を乗り継いで小学校に通った僕は、
やがて戦国武将のような勇ましい男に成長したのでした。
ほんっとすみません。
注)パリ=宮古島方言で畑のこと
1970年代まで、宮古島の久松地区には
一家に一頭農耕馬が存在したとういから、
上の話は事実に違いないようである。
って、ホントに僕の経験談なんですう~。